それはウィーンの最も有名なデザイン家具であり、カフェ・ハウスとは切っても切れない縁のある椅子です。トーネット社のクラシック・チェアNo.14は伝統的なウィーンのカフェ・ハウスの椅子として知られています。この椅子の背もたれは2本の曲木で出来ており、曲木に特化したトーネット社の代名詞ともなっています。創業者のミヒャエル・トーネットは水蒸気で無垢材を曲げる技術を発明し、家具製造の革命を起こしました。
ラインランド(ドイツ)出身のミヒャエル・トーネットはメッテルニッヒ侯爵の招きでウィーンを訪れ、1849年に自身の工房を設立。ほどなく、彼は木材が豊富で安い労働力のあるメーレンに生産拠点を移します。そして「ゲブリューダー・トーネット」工房はウィーン生まれの世界的家具メーカーへと発展しました。新しい分業方式により、世界で初めて、家具の大量生産が可能となりました。また、椅子は6つのパーツに分けることができたため、世界中への出荷ができるようになったのです。トーネット社の数多くの椅子がデザイン史のアイコンとなりました。アドルフ・ロースとオットー・ワーグナー、更にはヨーゼフ・フランクらがトーネット社のモデルのデザインを手がけました。
現在はNo.214となったNo.14は2019年に誕生160年を迎えます。試しに座ってみたい人はウィーンこそお勧めの場所。トーネットの14番の椅子は典型的なウィーンのカフェ・ハウスで使われています。カフェ・ティローラーホーフ、カフェ・コンディトライL.ハイナー、市庁舎近くのコンディトライ・スルカ、フォルクスオーパーのカフェ・ワイマール。また、第7区のカフェ・ウルリッヒで使われているトーネット214のように、現代的な内装の場所にもよく合います。
トーネット社創業200周年を記念してウィーンMAK(応用美術館)は19世紀最大の家具帝国に関する大展覧会を開催します。展覧会の題は「曲木、その多様性」。トーネットとモダン家具デザインが、現在の家具デザインにおけるトーネット社のコアな意味を示し、同社の代名詞でもある世界的に有名な曲木家具の技術的・類型的・美的・歴史的開発の背景を時代ごとに映し出します。
- 曲木、その多様性 トーネットとモダン家具デザイン、2019年12月18日~2020年4月13日まで
MAK-オーストリア応用芸術・現代芸術美術館、Stubenring 5, 1010 Wien
www.mak.at