Colorful tiles on the roof of St. Stephen's Cathedral in Vienna

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Heartbeat Streets - ウィーンのグレッツェルに恋する

複数の通りから構成される市街地の小さな単位をウィーンでは「グレッツェル(Grätzel)」と呼びます。同様の概念をベルリンでは「キーツ(Kiez)」、ニューヨークでは「ネイバーフッド(Neighborhood)」、マドリードでは「バリオ(Barrio)」と呼びます。グレッツェルの語源は「周辺」を意味する古語「ゲライツ(Gereiz)」で、グレッツェルの多くは、現在のウィーン1区に相当する旧市街の周辺に形成された集落から発展したものです。通常は市場や広場を中心に何本かの通りが伸びてグレッツェルを形成していますが、ウィーンのグレッツェルが他都市と違う点は、ほとんどの場合正式な境界線がなく、始まりも終わりも存在しないところです。

多少の共通点はあるものの、グレッツェルは建築物の組み合わせも、都会的な雰囲気も、食べ物も、売っているものもそれぞれ異なります。何より違うのは、そこに住む人です。グレッツェルごとの楽しみと、そこに集まる人、そして唯一無二の個性と魅力―――それこそが世界に名を馳せるウィーンにおいて、地区ごとに変わる暮らしのイメージを決定付ける要素であり、それぞれがコスモポリタンなウィーンの住民と旅行者に求められるまま、独自の役割を果たしています。

暮らすように旅をする:地元コミュニティに入り込む没入型体験

グレッツェルの独自性は一体感に起因します。こうした繋がりは、住民だけのものではありません。ウィーンのグレッツェルでは、ただ訪問するだけではなく、そこに暮らすように旅することができます。生粋のウィーンっ子気分でウィーンの本当の姿を見ることができるのです。ウィーンのグレッツェルは、人との出会いの場であり、多様性に満ちた近代的で進歩的な首都ウィーンの素顔が垣間見える場所でもあります。

ウィーンは今なお旅行者が歓迎される街です。ウィーン市民は長年、観光業に対して深い理解を持ち続けています。ウィーン観光局が2017年より3,600人以上の市民を対象に実施している観光業に関する意識調査でも、10人中9人が「観光業は市にポジティブな影響を与えている」と回答しています。2022年に独立系マーケティングリサーチ会社・マノーヴァ(MANOVA)がウィーン市観光局に代わって実施したサンプル調査より)

ユダヤ文化と近代建築とウィーンの原点

2024年注目の個性豊かな11のグレッツェル(アルファベット順):

  1. フライハウスフィアテル(Freihausviertel(4区)– クリエイティブで都会的な街:ナッシュマルクト(Naschmarkt)に隣接し、落ち着いた店やレストランが軒を連ねるフライハウスフィアテル(Freihausviertel)はウィーンのクリエイティブな人々が集まる地域。モダンなギャラリーや流行の最先端を行くショップが並ぶシュライフミュールガッセ通り(Schleifmühlgasse)は特ににぎやかです。その中でも名店と名高いのがカフェ・アンツェングルーバー(Café Anzengruber)。また、生粋のウィーンっ子であるシュテファニー・ヘルクナー(Stefanie Herkner)が料理を提供するツァ・ヘルクナーリン(Zur Herknerin)も必訪です。地区内には第三の男ミュージアム(Third Man Museum)もあり、映画の世界が楽しめます。フライハウスフィアテル・フェスト(Freihausviertelfest)と呼ばれる有名なお祭りは、毎年6月末に開催。
  2. グスハウスフィアテル(Gußhausviertel)&カールスプラッツ広場(Karlsplatz(4区)– グリュンダーツァイト(Gründerzeit、「創設者の時代」の意)とウィーンの歴史:装いも新たにリニューアルオープンするウィーン・ミュージアム・カールスプラッツ本館(Wien Museum、2023年12月6日オープン予定)とカール教会(Karlskirche)を中心とするグスハウスフィアテル(Gußhausviertel)は、グリュンダーツァイト建築が数多く残る地区。その名前の由来は、1750年に建設された大砲鋳造所(グスハウス(Gußhaus))から。跡地には現在、ウィーン工科大学のキャンパスが置かれています。国際色豊かな料理を提供するツゾム(Z’SOM)や伝統的なウィーン料理が楽しめるガストハウス・ブフエッカー&ゾーン(Gasthaus Buchecker & Sohn)など、食の楽しみも満載です。
  3. カルメリーターフィアテル(Karmeliterviertel(2区)– 粋とコーシャ料理:今も多くのユダヤ人が暮らし、街のあちこちにユダヤ人の歴史が息づく、活気溢れる地区。地区の中心となるカルメリーター市場(Karmelitermarkt)にはさまざまな食材が並び、周辺にもオーガニックなオリエンタル地中海料理を提供するテワ(Tewa)、カクテルに合う冷菜やウィーンでも指折りのシュニッツェルが楽しめるスコピック&ローン(Skopik & Lohn)など、名店が軒を連ねています。異色の犯罪博物館、ゆったりとした時間が流れるバロック庭園アウガルテン(Augarten)もおすすめです。
  4. クッチュカーマルクト(Kutschkermarkt(18区)– 高級食材とオーガニック志向:18区にあり、ウィーンに残る数少ない路上市場のひとつ。特に土曜は常設の露店に加えて、フルーツや魚など、オーガニック食材を中心に地元の特産物を集めたファーマーズマーケットも開かれるため、必訪です(ファーマーズマーケットも含めた拡張計画が進行中。2023年秋完成予定)。市場の先は、環境に優しい歩行者専用の緑道が整備されており、家族連れにも人気のスポットになっています。おすすめは露店の他にレストランを経営しているアトランティスフィッシュ(Atlantis Fish)。通りの賑わいを眺めたい場合はカフェ・ヒンメルブラウ(Café Himmelblau)も外せません。  9月初旬にはクッチュカーマルクトレストランが新たにオープンします。
  5. マイドリンガーマルクト(Meidlinger Markt(12区)– 素朴な魅力:クッチュカーマルクト(Kutschkermarkt)とは対極にあるマイドリンガーマルクト(Meidlinger Markt)は、本当のウィーンを垣間見ることができる場所です。マイドリング(Meidling)地区にあるこの市場には、伝統的なマーケットの他、街の雰囲気からインスピレーションを受けてオリエンタルなウィーン料理を提供するヴィルトシャフト・アム・マルクト(Wirtschaft am Markt)などのレストランもあり、ショッピングと食事を楽しむことができます。また、シェーンブルン宮殿(Schloss Schönbrunn)への道中にあるため、観光の合間の休憩にもおすすめです。
  6. ゼーシュタット(Seestadt(22区)– 湖畔のユートピア:ドナウ川沿いに整備が進む未来のグレッツェル。名前の由来となった遊泳湖(「ゼーシュタット」はドイツ語で「湖の町」の意)の周辺の居住・労働人口は、2030年代中に2万5千人を超えると予測されています。イベントホールのアリアナ(Ariana)に隣接するこの地区は、木造建築としては世界第2位の高さを誇る84メートルの高層ビル、ホーホーウィーン(HoHo Wien)があることでも知られます。また、カフェ・レオ(Café Leo)やゼー22(See22)などのグルメスポットも充実。ゼーザイテン書店(Seeseiten)では店主のヨハネス・ケスラー(Johannes Kößler)氏からさまざまなアドバイスがもらえます。本の配達も自転車で行う、環境に優しい本屋を訪れてみてください。
  7. セルヴィーテンフィアテル(Servitenviertel(9区)– リトル・パリ:ジークムント・フロイト博物館(Sigmund Freud Museum)に程近い、フランスの雰囲気漂う美しい地区。その中心を走るセルヴィーテンガッセ通り(Servitengasse)は現在、歩行者専用の緑道として整備が進められています(2023年11月再開通予定)。保存状態の良い歴史的集合住宅の1階にはビアガーデンや(フレンチスタイルの)居酒屋が入り、“ボン・ヴィヴァン(美食家)”も唸らせる街となっています。
  8. ゾンヴェントフィアテル(Sonnwendviertel)&クアルティア・ベルヴェデーレ(Quartier Belvedere(10区)– 都市開発エリア:ウィーン中央駅(Wien Hauptbahnhof)にほど近いこの地区では、現在都市開発が急ピッチで進んでいます。ゾンヴェントフィアテル(Sonnwendviertel)は、現代の都市生活に必要なものがすべて揃う住宅街。広さ70,000平米の緑豊かなヘルムート・ツィルク公園(Helmut-Zilk Park)を中心として、周辺には、ベジタリアン料理を提供するミミ・イム・シュタットエレファント(Mimi im Stadtelefant)や地元の食材を販売するビオ・ミオ(Bio Mio)など、「食」にまつわるスポットも充実しています。
    また、駅の反対側に建つクアルティア・ベルヴェデーレ(Quartier Belvedere)の近代建築は圧巻です。パリのジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センター(Centre National d'Art et de Culture Georges Pompidou)などを建築したイタリアの著名建築家、レンゾ・ピアノ(Renzo Piano)のベルヴェデーレ・パークアパートメント(Belvedere Parkapartments)も見どころのひとつ。さらにもうひとつ外せないのがベルヴェデーレ21(Belvedere 21)。世界的に有名な美術館でもあるベルヴェデーレ宮殿(Schloss Belvedere)から派生した現代美術館を、ぜひ訪ねてみてください。
  9. シュピッテルベルク(Spittelberg(7区)– ビーダーマイヤー(Biedermeier)様式のサンクチュアリ:車の入れないビーダーマイヤー(Biedermeier)地区とウィーンで最も有名なクリスマスマーケット(2023年より「エコイベント」に分類)が特に高い人気を誇りますが、ミュージアムクォーター(Museumsquartier, 通称MQ)やフォルクス劇場(Wiener Volkstheater)のすぐ裏手という立地に加え、ロマンティックな通りに可愛らしい家や多くの飲食店が軒を並べていることから、一年中賑わいを見せています。そうした名店の中には、ミシュランスターシェフであるパウル・イヴィッチ(Paul Ivic)氏のレストラン、ティアン(Tian)の姉妹店であるティアン・ビストロ(Tian Bistro)や、華々しい受賞歴を誇るシェフ、パルヴィン・ラザヴィ(Parvin Razavi)氏のレストラン、&フローラ(&flora)の姿も。ウィーン最大のショッピングストリートであるマリアヒルファー通り(Mariahilfer Straße)では、オーストリア出身のハリウッド女優兼発明家であるヘディ・ラマー(Hedy Lamarr)から名前を取った高級デパート「ラマー(Lamarr)」が現在建設中です(2025年春オープン予定)。
  10. シュトゥヴァーフィアテル(Stuwerviertel)&プラーター(Prater(2区)– 素顔のウィーン:かつて売春地区だったシュトゥヴァーフィアテル(Stuwerviertel)は現在、フォアガルテンマルクト(Vorgartenmarkt)の他、モチ・アム・マルクト(Mochi am Markt)、ブレーズル(Brösl)といったレストランが軒を連ねるモダンな地区へと姿を変えています。メッセウィーン(Messe Wien)の近く、アウスシュテルングス通り(Ausstellungsstraße)の向かいにはかの有名なプラーター公園(Wien Prater)もあります。どこか懐かしいヴルステルプラーター遊園地(Wurstelprater)で、童心に返ってみてはいかがでしょうか?園内では2024年3月、プラーター博物館(Prater Museum)がリニューアルオープンする予定です。「緑のプラーター(Grüner Prater)」の愛称で親しまれているプラーター公園には、ゆったりとした時間が流れています。
  11. イッペンフィアテル(Yppenviertel(16区)– 東と西が合うところ:飲食店が軒を連ねるイッペンプラッツ広場(Yppenplatz)の周辺は、ウィーンで最もカラフルなエリア。ブルンネンパサージュ(Brunnenpassage)では年間400件以上のアートイベントが開催され、ウィーン最大級の路上市場であるブルンネンマルクト(Brunnenmarkt)には170店以上の露店が並びます。トルコ系の屋台やお店も多く、オリエントの雰囲気が色濃く漂う地区ですが、近くにはシリアの軽食バーやアフリカの肉屋、ウィーンのデリなども散見され、まさに国際都市の鼓動が感じられるグレッツェルと言えます。

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